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TypeScriptを使わない理由|アプリケーション開発視点で考える

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特にWebアプリケーション開発の視点では、TypeScriptを使わない理由・ケースが存在します。

本記事の要点
  • TypeScriptを使わない理由・ケースを知りたい人
  • 開発視点でTypeScriptの使う・使わない理由を理解したい人

上記の悩みを解決しながら、TypeScriptを使う・使わない場面を解説します。

目次

開発視点によるTypeScriptの使い分け

結論は、TypeScriptとJavaScriptの使い分けが重要になります。

また、フロントエンド・バックエンド開発も考慮したTypeScriptの使い分けが必要になります。

ここでは、TypeScriptとJavaScriptの使い分け判断基準表を記載しておきます。

スクロールできます
判断項目TypeScriptを選ぶべきケースJavaScriptを選ぶべきケース
プロジェクト規模中〜大規模(コード量・機能が多く、長期運用前提)小規模・短期(数千行以内、すぐ動くこと重視)
チーム構成複数人で開発(役割分担、レビュー体制あり)少人数または個人開発(共有・レビューが少ない)
開発期間長期開発・長期運用を前提短期開発・PoC・プロトタイプ
要件の安定性要件が固まっており、設計が安定している仕様変更が頻繁に起きる・試行錯誤が多い
メンバーのスキルチーム全員がTypeScriptを理解しているTypeScript未経験者が多い・JS経験のみ
品質要件型安全性・保守性・可読性が重視される柔軟性・スピード・初期コストが重視される
開発対象APIサーバー、業務ロジックの多いWebサービスシンプルなREST API、軽量ツール・スクリプト
利用フレームワークNestJS、TypeORM、Prismaなど型対応が強い環境Express、Fastify、軽量フレームワーク中心
外部ライブラリ型定義が整ったライブラリ中心に利用する型定義が整っていない、マイナーなライブラリを使う
ビルド環境CI/CDやビルドパイプラインを構築できるシンプルに node index.js で動かしたい
将来的な拡張性長期的に機能追加やメンテナンス予定あり一度作って終わる単発ツールやAPI
使い分け判断基準表

TypeScriptを使わない理由|フロントエンド開発

TypeScriptにおけるフロントエンド開発において、使わない理由は以下になります。

TypeScriptを使わない理由|フロントエンド開発
  • 初期導入と設定が複雑で学習コストが高い
  • 小規模プロジェクトではメリットが薄い
  • チームメンバー全員がTypeScriptに習熟していない
  • ビルド・トランスパイルが必要で開発速度が低下する
  • 型定義ファイルの管理が面倒(特に外部ライブラリ)
  • 動的なコードや柔軟な実装がしづらい
  • 既存のJavaScript資産との互換性問題が生じることがある
  • ランタイムでは型チェックが効かない(過信によるバグ)

初期導入と設定が複雑で学習コストが高い

TypeScriptはJavaScriptの上位互換ですが、導入にはtsconfig.jsonの設定や型定義ファイル(@types)の追加が必要です。

開発環境によってはBabelやWebpackとの統合も必要になり、スクリプトを1枚書くような手軽さは失われます。

また、TypeScript自体の構文(型注釈、インターフェース、ジェネリクスなど)を理解するための学習コストも発生します。

JavaScriptに慣れた開発者からすると、最初は「書く量が増える」「制約が多い」と感じやすく導入のモチベーションを下げることがあります。

そのため、開発スピードを重視するプロトタイプ開発や短期案件では、初期セットアップの手間が見合わない場合があります。

小規模プロジェクトではメリットが薄い

TypeScriptの大きなメリットは「型安全性」と「大規模開発での保守性向上」ですが、小規模なスクリプトや短期間で完結するプロジェクトでは恩恵があまり感じられません。

数百行程度のコードで完結するようなLPサイトの動的演出や、一部機能の追加スクリプトでは型定義を整えるより、動くJavaScriptを直書きしたほうが効率的なこともあります。

さらに、チーム人数が1〜2人と少ない場合、コードレビューや共有もシンプルなため、型システムによる堅牢性よりもスピードと柔軟性を優先するケースが多いです。

チームメンバー全員がTypeScriptに習熟していない

TypeScriptの導入効果は、チーム全体で型を意識した設計ができるかに大きく左右されます。

もしメンバーの一部が型システムやジェネリクスの使い方に不慣れだと、コンパイルエラーの解決に時間がかかり、any型の乱用など可読性が悪化する場合もあります。

また、教育コストも無視できず、導入時には研修・レビュー・リファクタリングといった追加の工数が必要です。

チーム全員がJavaScriptに慣れている場合、TypeScriptを使うことで逆に心理的なハードルが生まれ開発効率が下がる可能性もあります。

ビルド・トランスパイルが必要で開発速度が低下する

TypeScriptはブラウザで直接実行できないため、トランスパイル(コンパイル)工程が必須です。

そのため、単純な変更を加えても毎回ビルドが必要になり、特にホットリロードが重い環境では開発体験が悪化します。

また、CI/CDパイプラインにおいても、トランスパイルを考慮した構成を取る必要がありJavaScriptに比べ構築の手間が増えます。

こうしたオーバーヘッドは、開発スピードを重視するスタートアップやアジャイル開発では無視できない要因です。

型定義ファイルの管理が面倒(特に外部ライブラリ)

TypeScriptでは、外部ライブラリを使用する際に型定義ファイル(@types/xxx)が必要です。

ただし、ライブラリによっては公式の型定義が未整備だったり、バージョンが古い場合もあります。

その結果、型の整合性を取るために手動で型定義を作成・更新する必要があり、これが地味に開発の負担になります。

頻繁にアップデートされるフロントエンドライブラリ(例:React周辺、UIコンポーネントなど)を多用する場合、管理コストが大きくなります。

動的なコードや柔軟な実装がしづらい

JavaScriptは柔軟な型変換やプロパティの動的追加など、TypeScriptでは型安全性の観点から制約が強くなります。

例えば、動的にオブジェクトを拡張したり、予測不能なデータ構造を扱う場合、型の定義が煩雑になりかえってコードが読みにくくなります。

小規模なUI操作やアニメーションの制御などでは、柔軟に扱えるJavaScriptの方が開発しやすいことも多いです。

既存のJavaScript資産との互換性問題が生じることがある

既にJavaScriptで書かれたプロジェクトにTypeScriptを導入する場合、移行コストが高くなります。

型定義を後付けする必要があり、ファイルごとに型エラーが発生するため段階的移行に時間がかかります。

また、BabelやWebpackとの設定調整も発生するため、結果的に導入が遅れるケースもあります。

古いライブラリでは、型定義が提供されていないこともあり、any乱用による本末転倒な状態になることもあります。

ランタイムでは型チェックが効かない(過信によるバグ)

TypeScriptの型チェックはコンパイル時のみ有効で、実行時には型情報が存在しません。

そのため、APIからのレスポンスなど外部入力に型が合わない場合でも、ランタイムでクラッシュする可能性があります。

これを防ぐにはランタイムチェックを別途実装する必要があり、結局は余分なコードが必要です。

開発者が「TypeScriptだから安全」と過信すると、実行時エラーを見落とす危険もあります。

TypeScriptを使わない理由|バックエンド開発

TypeScriptにおけるバックエンド開発において、使わない理由は以下になります。

TypeScriptを使わない理由|バックエンド開発
  • 小規模・短期プロジェクトではメリットが薄い
  • 学習コスト・初期設定の手間が高い
  • JavaScriptで十分な開発規模・要件が多い
  • トランスパイルが必要で開発速度が落ちる
  • ランタイムでは型チェックが効かず完全な安全性は担保できない
  • 外部ライブラリの型定義が不完全な場合がある
  • フレームワークやORMとの整合性・設定が煩雑になる
  • 柔軟性が求められるプロトタイプ開発に不向き
  • チーム全体がTypeScriptに精通していないと逆効果
  • Node.jsの動的特性を活かしにくくなる

小規模・短期プロジェクトではメリットが薄い

TypeScriptの導入で得られる最大のメリットは、大規模開発における保守性と型安全性の向上です。

しかし、小規模APIや短期間で構築・リリースするプロジェクトでは、その恩恵が十分に活かされないことが多いです。

例えば、10〜20個程度のエンドポイントしかないREST APIや、1〜2名で構築するサービスでは、TypeScriptの型管理を徹底するよりも、素早く動くJavaScriptのほうが開発効率が高いことがあります。

特にスタートアップの試作品やPoC(概念実証)では、スピード重視のためにあえてTypeScriptを避ける選択が現実的です。

導入・設定・学習コストを考慮すると、「TypeScriptを使うこと自体がオーバーエンジニアリング」になってしまうことも少なくありません。

学習コスト・初期設定の手間が高い

TypeScriptをバックエンドに導入するには、tsconfig.jsonの設定、型定義の整備、ビルド環境の構築(ts-nodeやbabel)が必要です。

また、バックエンドではデータベース操作やミドルウェア連携なども多く、それぞれに型整備が求められるため、導入初期に大きな労力がかかります。

特に、JavaScriptに慣れたエンジニアがTypeScriptに移行する場合、エラー解消に時間がかかることも多く、短期的には生産性が落ちます。

加えて、ジェネリクスやユニオン型など、TypeScript特有の構文理解も必要で、学習コストが無視できません。

結果として、開発速度を最優先する現場では「今はまだ早い」と判断されることもあります。

JavaScriptで十分な開発規模・要件が多い

Node.jsのエコシステムは成熟しており、Express、Fastify、NestJSなど多くのフレームワークはJavaScriptのみでも十分に構築可能です。

たとえば、APIのレスポンス構造が単純、ロジックが軽量で複雑なビジネスルールが少ない場合、JavaScriptでの実装で十分安全かつ効率的に動作します。

TypeScriptを導入しても、得られる型安全性の恩恵がコストに見合わないケースも多いです。

つまり、「問題が起きていない領域」にまで型を導入することで、逆に開発負担が増えることがあります。

要件が明確で変更が少ないバックエンドでは、TypeScriptの優位性は相対的に小さくなります。

トランスパイルが必要で開発速度が落ちる

TypeScriptはブラウザ同様、Node.jsでもそのまま実行できません。

したがって、ts-nodeやtscなどによるトランスパイル工程が必要です。

このビルド工程は、変更を即時反映したい開発時には煩わしく、ホットリロードが遅くなる原因にもなります。

さらに、CI/CDパイプラインにもビルド工程を追加する必要があり、設定の複雑化を招きます。

単純なサーバーやスクリプトでは、こうしたオーバーヘッドが開発効率を下げるため、JavaScriptを選ぶ方が合理的です。

ランタイムでは型チェックが効かず完全な安全性は担保できない

TypeScriptは静的型付け言語ですが、型チェックはコンパイル時のみです。

つまり、実行時には型情報が削除されてしまうため、APIから予期しないデータが来た場合や、ユーザー入力の不正値は別途ランタイムチェックが必要になります。

このため、「TypeScriptを使えば安全」という思い込みは危険で、Zodやio-tsといった型検証ライブラリを併用しなければ完全な安全性は得られません。

結果として、型を二重に定義するような手間が増えることもあります。

「静的型」と「実行時バリデーション」を両立させる設計は複雑で、小規模プロジェクトでは過剰になりがちです。

外部ライブラリの型定義が不完全な場合がある

バックエンドでは多くのサードパーティライブラリ(データベースドライバ、認証、ロギングなど)を使用しますが、全てが完全な型定義を提供しているとは限りません。

特にマイナーなライブラリや古いパッケージでは、型定義がなかったり、@typesが更新されていなかったりします。

その結果、any型を多用することになり、TypeScriptの型安全性の恩恵が薄れます。

また、ライブラリのアップデートによって型定義が破損するケースもあり、型整備のメンテナンスコストが発生します。

安定したライブラリ選定が難しい現場では、この点が導入をためらう理由になります。

フレームワークやORMとの整合性・設定が煩雑になる

TypeScriptでバックエンドを構築する場合、フレームワーク(Express、NestJSなど)やORM(TypeORM、Prismaなど)との整合性を取る必要があります。

これらは型定義を活用できる一方で、設定が複雑になりがちです。

例えば、エンティティクラスの定義や、スキーマと型の同期、デコレーターの型制約など、TypeScript特有のエラーが多発することもあります。

また、フレームワークによっては、JavaScriptの方がチュートリアルやドキュメントが豊富な場合もあり、TypeScriptを使うことで情報収集のハードルが上がることもあります。

柔軟性が求められるプロトタイプ開発に不向き

プロトタイプや実験的なAPI開発では、仕様変更が頻繁に発生します。

TypeScriptでは、型定義の変更が都度必要となるため、柔軟な開発が阻害される場合があります。

「とりあえず動かして仕様を確認する」という段階では、静的型付けがかえって足かせになることがあります。

初期段階でJavaScriptを使い、仕様が固まった段階でTypeScriptへ移行する方が合理的な場合もあります。

チーム全体がTypeScriptに精通していないと逆効果

TypeScriptの強みを最大限活かすには、チーム全員が型設計・ジェネリクス・ユニオン型などを理解している必要があります。

しかし、全員が習熟していない場合、anyの多用や意味のない型注釈が増え、むしろコードが複雑化します。

また、コードレビューも難しくなり、学習コストがチーム全体の負担になります。

そのため、短期間でチームを編成するプロジェクトでは、JavaScriptを選んだ方がスムーズなケースも多いです。

Node.jsの動的特性を活かしにくくなる

Node.jsは本来、柔軟な動的言語としての特性を活かした軽量開発が魅力です。

しかしTypeScriptを導入すると、厳密な型管理や明示的な定義が必要となり、スクリプト的な柔軟性が損なわれます。

特に、メタプログラミングや動的ロードなどを多用する設計では、TypeScriptが制約になることがあります。

「動的に柔軟に動かすことが前提のアプリケーション」では、TypeScriptは不向きです。

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